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学会誌に発表された論文の一部分と、学会発表の抄録を紹介します。
あなたの腰痛などの疑問を、医師や助産婦さん等と相談される資料として 活用戴けましたら幸いです。



「産褥早期における腰腹部固定帯の効用」・・・母性衛生;1999.11
 
服部 律子   京都大学医療技術短期大学部看護学科
中嶋 律子   名古屋市立大学看護短期大学部
佐藤 和美   田附興風会北野病院産科
島岡由起子   済生会野江病院産婦人科
要約
産褥早期の腰痛を主とする骨盤・外陰部の不快症状の緩和の為に、腰腹部固定帯の効用を検討した。
対象は大阪市内の産科病棟で正常分娩し、産後も医学的問題の無かった褥婦であり、装着群67名は、分娩後から退院まで夜間を除き、腰腹部固定帯を装着し、コントロール群66名は、腰腹部固定帯や他のコルセットなどを使用しなかった。効果の測定には、骨盤・外陰部の不快症状の質問紙と疲労自覚症状調査票を用い、産褥2日と5日に調査した。
結果は、装着群の方が、産褥5日の骨盤・外陰部不快症状の訴えが、コントロール郡に比べて有意に低かった。また、産後の疲労自覚症状数も装着群の方が低値であった。本検討から腰腹部固定帯は、産褥早期の不快症状の緩和に効果があることが示唆された。

(注)、緒言
女性は、妊娠分娩という負荷を体験することで身体に大きな変化を経験する。その中でも妊娠中の腰痛は、マイナートラブルとして一般的であるが、産後は速やかに回復し、母体に影響はないと言われている。しかし、女性の腰痛は、加齢と経産回数に応じて頻度が増加するといわれ、妊娠分娩と腰痛の関係は無視できないと考えられるが、産後の腰痛の実態に関する報告は少ない。最近では、女性の腰痛の原因として、妊娠分娩との関連において骨盤輪の靭帯弛緩による骨盤輪由来の腰痛が注目されてきており、早期治療が推奨されている。分娩後の腰痛は様々な原因が考えられるが、将来的な女性の健康を考える上で看護介入の必要性が高くなってくるであろう。・・・以下省略。

 

      

 

「妊産婦の腰痛、恥骨部痛に対する腰腹部固定帯(トコちゃんベルト)の有用性」

・・・第37回新生児学会;2001.7.17
この発表は、「産婦人科の実際」Vol.52, No.2 FebrUary, 2003に、論文とし > て掲載されました。
合阪 幸三   御茶ノ水・浜田病院
渡部 信子   健美サロン渡部
目的
妊娠期間中に腰痛、恥骨部痛を訴える症例は数多く見られる。多くは比較的軽症のもので、湿布薬などで経過観察しているうちに、分娩終了後自然治癒するが、一部の症例では痛みにより日常生活が著しく制限され、分娩後も軽快しないで整形外科的治療を要することもある。近年、重症の妊産婦の腰痛、恥骨部痛の原因として、骨盤輪を形成する仙腸関節および恥骨結合のズレによるものが注目されており、治療として腸腰関節および恥骨結合を支持する腰腹部固定帯(骨盤支持ベルト)の装着が有効であると報告されている。今回我々は、妊娠後期に重症の恥骨部痛を生じ、歩行困難となった症例に対して腰腹部固定帯(トコちゃんベルト)を使用し、良好な経過が得られた1例を経験したので報告する。

対象
症例は31歳、OGOP。身長160cm、非妊時体重49kg。既往歴、家族歴に特記すべきことはない。無月経を主訴に来院。妊娠と診断され、以後順調に経過していた。妊娠 29週頃から恥骨部痛を訴え始め、安静にて経過観察していたが、31週頃より恥骨部痛が耐えきれないくらいとなり、歩行困難も併発したため腰腹部固定帯(トコちゃんベルト)を装着させた。

方法
トコちゃんベルトは、腰腹部を巻く部分と上前腸骨棘と大転子との間を経由させ、恥骨結合上縁で巻く部分との2本のベルトより構成されている。腰腹部を巻く部分は軽く締めるだけであるが、恥骨結合の部分はしっかりと締める必要がある。この固定帯と通常のコルセットとの違いは、通常のコルセットが腰椎を中心とした脊椎を補正するのに対し、トコちゃんベルトは両側の腸骨翼から恥骨結合にかけて支持性のあるベルトで固定することにより、骨盤輪をしっかりと把持するという点にある。

成績
トコちゃんベルトの装着により、恥骨部痛は著明に軽減し、歩行困難も改善された。この効果は分娩直前まで持続し、妊娠39週5日に自然陣発、正常経腟分娩となった。児は3056gの男児でApgar scoreは9点であった。分娩終了直後より軽度の腰痛を訴えたため、トコちゃんベルトを再度装着させたところ、腰痛は軽減した。患者の希望により、産褥1ヶ月間装着させたが、歩行困難、下肢静脈瘤などの副作用は認められなかった。

結論
妊娠中は各種ホルモンの影響により、靭帯のゆるみが生じやすくなる。妊産婦にみられる腰痛、恥骨部痛もその影響により仙腸関節や恥骨結合にゆるみを生じ、骨盤輪が変形することによるといわれている。今回試用した腰腹部固定帯(骨盤支持ベルト、トコちゃんベルト)は、本症例において腰痛、恥骨部痛の改善に極めて有効であると思われた。今後、数多くの症例に対する追試が望まれる。

 

      

 

「妊婦の恥骨部痛に対する新しい診断法とその治療」     
・・・産婦人科学会総会;2002.4.8 
内容
妊娠や出産に伴う腰痛、お尻や恥骨、股の付け根の痛み等の原因は、妊娠性のホルモンの働きで起きる骨盤などの緩みですが、2002年4月に開催された日本産婦人科学会総会で、下記の抄録の様に緩みの診断法と、骨盤の固定が治療として効果があることが報告されました。恥骨結合は、分娩の時に最も緩みますから、この報告は産後の骨盤ケアの必要性も示唆しています。
この抄録は、抄録集としてほとんど全ての産婦人科医師の元に届いているはずですが、医師がこの抄録に注目して、ケアに活かしていく事とは全く別の次元の問題です。
妊娠中や産後の腰痛に悩まされているあなた、このことに関心を持たれたあなたが、この抄録を元に、医師や助産婦に適切なケアを要求する事が必要だと思います。

 
演題分類コード1 13.妊娠・分娩・産褥期の病理
演題分類コード2 16.臨床検査法・機器の開発・応用
演 題 名 妊婦の恥骨部痛に対する新しい診断法とその治療
抄録本文の種別 症例以外

目的
近年妊産婦の腰痛、恥骨部痛の原因として、骨盤輪を形成する仙腸関節および恥骨結合のズレによるものが注目されている。今回我々は、重症の恥骨部痛を訴えた症例に対して、恥骨結合部分の超音波断層法による観察を行うことにより恥骨部痛の客観的指標となりうるかどうかを検討した。さらにこのような症例に対する仙腸関節および恥骨結合を支持する腰腹部固定帯(骨盤支持ベルト)の有用性についても検討を加えた。

方法
骨盤に器質的疾患を持たない初産婦で、歩行制限など重症の恥骨部痛を訴えた17症例(P群)を対象とした。恥骨部痛の発症はいずれも妊娠27~34週で、外来受診時に恥骨部痛を訴えた時点で経腹的に恥骨部の超音波断層法を施行し、恥骨結合の部分の横断面像を撮影した。両側の恥骨結合内側上端部と、画像上で両側恥骨が密着を開始し始めた部分とを直線で結び、その角度(恥骨結合上端部開角、以下A)を測定した。同週数で、恥骨部痛を伴わない初産婦25例(C群)を対照とした。P群には骨盤支持ベルトを2週間以上装着させ、治療後のAも評価した。

成績
P群では恥骨部痛発症時のAは、117.4±39.2度と、C群の82.8±20.5度に比べて有意に大きかった(p<0.01)。P群に骨盤支持ベルトを装着した後では、77.3±16.9度と、有意に改善することが明らかとなった。骨盤支持ベルトの装着により、全ての例で恥骨部痛は著明に改善し、歩行障害などの臨床症状も消失した。

結論
妊娠後半期に恥骨部痛を訴える症例では、Aが有意に広くなることから、Aは恥骨部痛の客観的指標となり得る。骨盤支持ベルトの装着によりAは正常範囲に矯正され、それにより症状が改善されることが明らかとなった。